- 日時
- 令和2年8月5日(水) 14:00〜16:45(受付 13:30〜)
- 会場
- 愛知県立半田高等学校七中記念館(名鉄河和線住吉町駅から徒歩8分)
- 演題
- 探査機「はやぶさ2」による小惑星探訪
- 講師
- 渡邊 誠一郎 様 (名古屋大学大学院 環境学研究科 教授)
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- 講演要旨
探査機はやぶさ2は、2018年6月から約1年半、小惑星リュウグウに滞在しました。各種の観測をしながら、移動式小型ロボットを表面に降ろしたり、自身で2回も着地して試料の採取をしたり、大活躍でした。リュウグウは赤道の直径が1 kmほどで、こま(独楽)を2つ重ねたような独特の形です。これは、この天体がかつてはより速く自転していた名残です。表面には大きな岩がごろごろしていて、大きな小惑星が壊れた際に、その破片が集まってできた瓦礫(がれき)天体だとわかりました。これははやぶさ初号機が訪れたイトカワと同じです。表面の岩石はすかすかで水が少し含まれていることもわかりました。
さて、今回のミッションの1つの目玉は衝突装置SCIです。これは重さ2 kgの銅の弾丸を小惑星表面に衝突させ、人工のクレーターを造る目的で搭載されています。弾丸を加速するのに爆薬が使われるため、探査機は急いでリュウグウの影に隠れますが、逃げる途中で小型カメラを分離して、衝突の様子を撮ることをもくろみました。作戦は見事に成功、直径が18 m、深さが2mの人工クレーターを天体表面に作ることに成功しました。これは私たちにとっても予想外に大きなクレーターでした。このことから、リュウグウの表面付近の岩や石や砂の粒子は、互いにほとんど付着力をもたず、弱い重力だけでまとめられていることがわかりました。さらに、リュウグウの表面の年齢も推定できました。
2019年7月、はやぶさ2はSCIが造った人工クレーターから掘削された地下物質の採取にも成功しました。2020年(今年)の年末、この貴重な試料はオーストラリアに投下され回収される予定です。リュウグウの近傍での観測で、いくつもの発見とともに多くの新たな謎が見いだされました。試料の分析で、これらの謎のいくつかは解明され、太陽系の歴史や地球にもたらされた水や有機物に関する情報が得られると期待しています。
- キーワード
- 太陽系探査
- 小惑星
- 太陽系形成
- 海と生命の起源
- サンプルリターン
- 講演の様子
8月5日(水)令和2年度第2回サイエンスコミュニケーションを開催しました。名古屋大学環境学研究科から渡邊誠一郎先生をお迎えし、講演と交流会を行いました。愛知県の新型コロナウイルス感染症の状況を考慮し、急遽Zoomを用いたオンラインでの講演会となりました。初めての試みでしたが、大きなトラブルもなく行うことができました。太陽系の構成や小惑星帯、タッチダウンするに当たって気を付けたポイントなど研究を行う上で大変であった点についてわかりやすくお話をしてくださいました。タッチダウンして実際に弾丸を発射して岩石を飛び散らせながらサンプルを採取している動画では遠く離れた天体の生の映像を見ることができて感動しました。
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- 参加者の感想(アンケートより)
はやぶさ2の最新情報について触れることができ良い機会になったと思います。
はやぶさ2は、正に地球へ帰還中。大変興味のある講演内容でした。また、多くの質疑応答があり、やりとりを聞いている側も、内容についての理解が深まったと感じました。
zoomを使うとのことで心配だったが、むしろ画面が見やすく、質問もできたので良かった。
大学の講義さながらの素晴らしい講演を聞くことができ、新たな学びが多くありました。このような貴重な機会を設けていただき、ありがとうございました。