令和2年度 第5回 サイエンスコミュニケーション

日時
令和3年2月22日(月) 14:00〜16:45(受付 13:30〜)
会場
愛知県立半田高等学校七中記念館(名鉄河和線住吉町駅から徒歩8分)
演題
線虫をモデルとした脳科学のフロンティア研究 ー前例を作り、道を創るー
講師
森 郁恵  様 (名古屋大学大学院 理学研究科 教授)
森 郁恵
講演要旨

動物行動の成り立ちを知ることは、人間が、世界をどう認識しているかを理解することにつながる。C.elegans(シーエレガンス)は、体長約1mmの土壌自活性線虫である。この線虫C.elegansは、1960年代に分子生物学の創始者であるシドニーブレナーによって、生命現象の分子メカニズムを解き明かすためのモデル生物になった。体は、わずか959個の体細胞からできており、そのうち、脳神経系を形成する神経細胞は302個しかない。最も単純な生物モデルでありながら、線虫C.elegansは、いろいろな外界刺激に反応し、それらの刺激を記憶し、餌などの報酬と関連付けて学習することができる。我々の研究室では、線虫C.elegansの温度に対する応答行動(温度走性)に着目し、脳神経回路における演算様式を知り、外界刺激の入力を受けて、応答行動として出力するまでの普遍的原理を解き明かし、人間は自分を取り巻く世界をどう認識しているのかを知ることを目指している。本講演では、我々の研究室で行っている温度走性に関する多角的な解析について紹介し、科学のフロンティア研究について語りたい。

キーワード
  • 動物行動
  • 脳科学
  • 線虫
  • C.elegans(シーエレガンス)
  • 記憶と学習
  • 意思決定
  • 温度走性
  • 神経回路
講師の先生から

好きなことを見つけたら、たとえ、困難があっても、やり続けてほしい。きっと、好きなことの本質が見えてくる。本質が見えてくると、自分の前には、考えても見なかった広く大きな世界が待っていることに気づかされるのです。極めることは自分を狭めることではなく、自分を広げることです。