令和3年度 第5回 サイエンスコミュニケーション

日時
令和4年1月22日(土) 14:00〜16:45(受付 13:30〜)
会場
愛知県立半田高等学校七中記念館(名鉄河和線住吉町駅から徒歩8分)
演題
病原菌の鉄獲得戦略を利用する殺菌手法の開発
講師
荘司 長三 先生 (名古屋大学大学院理学研究科 教授)
荘司 長三
講演要旨

多剤耐性菌の出現が問題となっている緑膿菌などのある種のバクテリアは、鉄分が不足した状態に陥ると、HasAと呼ばれる小型のヘム獲得タンパク質を分泌してヘモグロビンなどの生体中のヘム(鉄ポルフィリン錯体)を持つタンパク質からヘムを奪い取り、菌体内に取り込むことで、生体内などの鉄分が不足する環境であっても、生き長らえることができます。HasAを用いて鉄分としてのヘムを獲得するバクテリアの生存戦略を逆手に取り、緑膿菌の増殖を選択的に抑制し、さらに、可視光照射によって殺菌する手法について紹介します。HasAは、ヘムの結合様式が独特で、大部分のヘムが溶媒(水)に露出した状態であり、ヘム以外の構造の分子であっても結合できることを見出しました。道路標識やインクの青色に使われる色素分子のフタロシアニンをHasAに取り込ませて「偽のHasA」を作成して、緑膿菌の培養液に投与すると、緑膿菌は、ヘムを獲得する経路を塞がれてしまい、増殖できなくなります。光増感剤のガリウムフタロシアニンをHasAに結合させて、緑膿菌にガリウムフタロシアニンを取り込ませると、近赤外光を照射により99.99%以上の緑膿菌を光殺菌することができます。薬剤耐性化した緑膿菌にも有効であることを確認しており、皮膚科領域での実用化を検討しています。講義では、生体内での鉄の役割を簡単に説明するとともに、緑膿菌の鉄獲得システムを逆手にとる緑膿菌の増殖阻害と光殺菌のメカニズムについて解説します。

キーワード
  • ヘム鉄
  • 緑膿菌
  • 多剤耐性菌
  • 抗菌薬(抗生物質)
  • 光線力学療法
  • 活性酸素種
  • フタロシアニン
講師の先生から

鉄は、人間を含めた動物だけでなく、植物やバクテリアなど、地球上のすべての生物にとって重要な金属で、バクテリアも鉄がないと生きられません。病原菌の鉄獲得戦略をうまく利用する殺菌薬の開発研究を理解してもらい、既存の薬とは異なる「新しい作用メカニズム」の新規医薬品開発に興味を持ってもらえれば嬉しいです。

ポスター
第5回案内(校外)
講演の様子
抗生物質が効かなくなっている多剤耐性菌による現代医療の問題を生体にとって必要不可欠な金属原子である鉄に着目し、細菌をだますことで殺菌する手法を紹介していただきました。
先生には研究の話だけでなく、大学の研究室とはどのようなものなのか、研究室生活についても話していただきました。新しいもの、新しい学問を生み出していく、研究者としての醍醐味を語っていただいた。
講演の様子
参加者の感想(アンケートより)

難しい単語などもあったけれど、わくわくして聞くことができました。もっと知りたいです。大学の様子なども知れたことが嬉しかったです。また、大学の研究のクオリティが高いことを知って、今よりもっと、進学して学びたい気持ちが高くなりました。これからのモチベーションになりそうです。

緑膿菌にヘム以外の抗菌性のある物質を勘違いさせて菌を殺すということを思いついたのはとてもすごいなと思いました。この研究の成果で、多くの人の命を救うこともできるんだと考えるとカッコイイなと思いました。

今回の講演の内容は難しいものではあったけれどその場での解説や図説などによりある程度の理解を得られた。また、大学の様子を聞くことにより、講演の内容だけでなく、研究室にも興味を持つことができた。