平成28年度 第2回 サイエンスコミュニケーション

日時
平成28年7月23日(土) 14:00〜17:00(受付 13:30〜)
会場
愛知県立半田高等学校柊陵会館学習室(名鉄河和線知多半田駅から徒歩8分)
演題
『イネの収量を増やすには―ゲノム研究が変える植物育種―』
講師
松岡 信  様 (名古屋大学大学院生命農学研究科 教授)
http://www.handa-h.aichi-c.ed.jp/27ssh/ssh-commu/28/koushi2802.jpg

名古屋大学大学院農学研究科教授。農学博士。名古屋大学大学院農学研究科博士課程修了。 植物ホルモン、ジベレリン(GA)、ブラシノステロイド(BR)やサイトカイニン(CK)に関する生合成や信号伝達経路を研究している。遺伝子操作を利用して有効な草丈を持つイネを開発した。 また、植物ホルモン関連遺伝子を用いた分子育種を展開し、収量を20%増加させたコシヒカリを作ることに成功した。

講演要旨

イネのゲノム構造は他のイネ科作物(トウモロコシやコムギ)のゲノム構造と類似性が高い一方、そのサイズは他の作物に比して非常にコンパクトに構成されていることが知られています。 このようなイネの有利な形質に着目して、イネの全ゲノム構造解析が行われ、2004年にその完全配列決定が終了しました。  私たちは、このイネゲノム情報を利用して、イネの収量を左右する遺伝子を単離・解析し、さらに利用することを試みています。 ジャポニカ米のコシヒカリに比べ、インディカ米のハバタキは植物体の草丈が低く、多くの粒数を実らせます。この着粒数と草丈を制御するメカニズムを研究するため、 コシヒカリとハバタキのゲノムを比較し、この2つの形質を制御する遺伝子を探しました。その結果、背の高さを決める遺伝子Ph1は「緑の革命」に貢献したsd1と同じ遺伝子であり、 タネの数を決めるGn1は植物ホルモンのサイトカイニンを分解する遺伝子でした。このGn1遺伝子はイネの花が作られる時期・場所で働いており、この遺伝子の働きによりサイトカイニン量 が増減することで花の数(タネの数)も増減することが分かりました。次に、遺伝子組み換え法ではなく従来の交配法を用いて、これらの遺伝子をコシヒカリに導入しコシヒカリの改良を試みました。 その結果、改良コシヒカリは元のコシヒカリに比べ粒数が約20%増加し草丈は約18%低下し、たくさん稔って倒れにくい系統を作ることが出来ました。このように、イネゲノムの情報とツールを有効に利用すれば、 これまで難しかった作物育種も可能となることが分かりました。

講演の様子

中学生の皆さんの参加があり、交流会においても多くの質問が出ました。ありがとうございました。

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