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半田高等学校
在校生論文顕彰

第10回(平成11年度)

第10回(平成11年度)在校生論文顕彰は1月に締め切り、審査を経て、最優秀賞1編、優秀賞2編、佳作5編が選ばれました。結果発表と表彰は2月に行われました。


基本テーマ
『二十一世紀への心の飛翔 ~未来の私へのメッセージ~』
応募総数
252編
入賞作品
 題名受賞者
最優秀賞 ボランティアへの誘い 3年
中井 葉月
優秀賞 私の故郷論
― 忘れがたき故郷を想う ―
3年
磯村 和子
優秀賞 千年後にも誇れるような 2年
滝上 伸子
佳作 ある受験生の心の叫び2 3年
小塚 康晴
佳作 杉江りな 3年
杉江 りな
佳作 病は気から、笑いから 3年
関 華奈江
佳作 自己ボランティア 1年
近藤 玲子
佳作 社会の二分化における人間のあり方
及び将来的情報考察
1年
中道 玲瑛

最優秀作品

ボランティアへの誘い
中井 葉月

ボランティアの語源は、ラテン語 ”Voluntas ” からきており、自由意志を表す言葉で、自由、勇気、正義、自発、親切などの意味がある。

ボランティア活動については、
「ボランティア活動とは、個人が自発的に決意・選択するものであり、人間の持っている潜在能力や日常生活の質を高め、人間相互の連帯感を高める活動である」

一九九〇年 IAVE総会「世界ボランティア宣言」より
と定義づけられている。

ボランティア活動は他から強制されて行うものではなく、個人の自由な意志に基づく活動でなければならない。一般的にボランティアは、健康な人や強い立場の人が、障害を持った人や弱い立場に置かれている人たちに対して一方的に援助を施すものと考えられがちである。しかし、世界ボランティア宣言にあるように、人間相互の連帯感を高める活動でなければならないのである。一方的な援助や施しはボランティア活動とは言えない。ボランティアを行う人とそれを受ける人たちは互いに信頼関係を保ち、互いに喜びを感じる関係でなければならない。

私は中学2年のときから老人ホームでボランティア活動を続けている。仕事の内容は主に、洗濯物畳み、部屋の掃除である。活動を始めてから約5年が経ち、ホームのお年寄りたちともとても親しく話をすることができるようになった。私の姿を見つけると、「おお、来てくれたか。待っとれよ」と言って部屋まで戻り、お菓子を大事そうに持ってきてくれる老人、私と一緒に洗濯物を畳みながら、「なかいはづきさん。随分見なんだなあ。今日は休みかね」と名前を必ずフルネームで呼んでくれる老人など、たくさんのお年寄りたちが私のことを覚えていてくれる。そして互いに微笑みを交わす。お年寄りたちの笑顔を見ると、「私はこの人たちの役に立っているのだ」と実感できる。それがたまらなくうれしくて私は今日までボランティア活動を続けてくることができた。この5年間、老人ホームでボランティア活動をしてきて私は多くのことを学ぶことができた。考えたこと、感じたことがたくさんある。今回、この顕彰論文を通して、後輩たちへボランティア活動をすることの楽しさや大切さを伝えたいと思い、筆を執った。

まず、私がお世話になっている老人ホームとはどういうところなのか説明したい。老人ホームには大きく分けて4つの種類がある。(別表1)

利用者は、年齢・障害の程度・経済状態により行政によって、特別養護老人ホームと養護老人ホームのどちらかに振り分けられる。軽費老人ホーム、ケア・ハウス、有料老人ホームは行政を通さずに自由契約で利用できる。私が活動を行っている老人ホームは「社会福祉法人知多福祉会 特別養護老人ホーム」である。つまり厚生省が認可した社会福祉法人という組織の知多支部が運営している老人ホームだ。

老人ホームで生活しているお年寄りは、どんな生活をしているのであろうか。(別表2)

日課表以外の時間は、談話室でテレビを見たり、話をしたりして各々が思い思いに過ごしている。自宅で過ごすような自由気ままな生活はできないが、規則正しい健康的な生活をしているのだ。

次に、年間行事である。(別表3)

「こんなにたくさんの行事があるのか」と驚いた人がいるかもしれない。入所しているお年寄りに少しでも喜んでもらえるよう、そして彼等の孤独感をなくすことができるように、寮父さんや寮母さんを始め、この施設で働く人たちが企画しているのだ。寮母さんたちの仕事量は極めて多い。おむつ交換・食事介助・トイレ誘導・ベッドメイキング・入浴介助・ポータブル洗浄・掃除・洗濯・・・・など。利用者80人に対して寮父・寮母合わせて18名。交代制勤務なので実質、80名を10名程度で見なくてはならない。夜勤は2人で行っているそうだ。とても寮母さんたちだけでは、行事の準備や部屋の掃除などを行うことは難しい。老人とのコミュニケーションも満足に行えないだろう。そこで、少しでも多くのボランティアが望まれているのである。

私の行っている老人ホームにも、たくさんの定期的ボランティア団体が活動している。(別表4)

仕事の内容は主に掃除・洗濯補助・着替え介助である。他に、盆踊り大会やクリスマス会などのイベントの手伝いやショッピングの付き添いなどをしている。

定期的ボランティアでなくても、団体や個人でボランティア活動している人もたくさんいる。自分の特技や趣味を生かしたボランティアも多い。(別表5)

さて、中・高生のボランティアは・・・・・・と言うと、「ふれあいの里」では、ガールスカウトと私だけなのである。私のような中学・高校生の個人ボランティアで、継続している人はいないそうだ。2・3回来て、止めてしまう人が多いという。

最近、中学校や高校では福祉理解の一環として、授産所や老人ホームなどでの福祉体験学習が盛んに行われている。「ふれあいの里」でも12校の体験学習を受け入れている。しかし、体験学習後再び訪れることはほとんどないという。ボランティアを始める「きっかけ」は用意されているのだが、続かないのである。部活動や塾、学校の勉強などで時間がないのかもしれない。しかし、ほんの少し時間の使い方を工夫することで、ボランティア活動に費やす数時間を工面することはできるのではないかと思う。

ボランティアについて、指導員や寮母さんたちから話を聞くことができた。

これらの話から、ボランティアがいかに必要であるか、ボランティア活動に携わることがどんなに重要であるかを推察することができる。社会福祉の現場は、福祉の専門職ばかりでなく、大勢のボランティアによって支えられている。特に高齢化社会に突入しようとする日本では、専門職の力だけではどうしても限界があり、一人でも多くのボランティアの力が必要となる。高校生になれば責任感があり、体力も十分ある。ボランティアをするには最適な年齢である。受験や就職を控えたこの時期をボランティアに費やすことは、管理社会によるレールを敷かれた人生において、寄り道や道草をしているように思うかもしれない。しかし、私たちの人間形成や人生設計にとっては、とても有意義なことだと言えるのだ。感受性の豊かなこの時期に、ボランティア活動を通して吸収することはたくさんあると思う。人を思いやる心や弱い人たちの立場に立ってものを見る姿勢などが、自然に身についてくるであろう。様々な人と出会い、理解を深め、本当の喜びを知り、そして自分も人間的に大きく成長することができるのだ。また、ボランティア活動をすることによって直に、自分の目で自分とは違う社会を見ることができる。これからの日本を担う私たちが、どうすれば全ての人が住みよい社会になるかを考えることができるチャンスの場なのだ。だから、特に高校生の時期に多少の犠牲を払ってでも是非ボランティア活動に参加してほしいと思う。

わたしは、中学、高校と一人でボランティア活動を続け、そのことに自己満足をしていたと思う。しかし、友達を誘って、少しでもボランティアの輪を大きくしていこうと努力することが必要だったと反省している。全国には、全校生徒が一丸となってボランティア活動をしている中学校や高校がある。また、福祉クラブとして取り組んでいる学校もある。学校単位で取り組めば不安もなく、楽しく活動できるであろう。また、全国各地にあるボランティアセンターや各市町村にある社会福祉協議会の窓口では、職員がボランティアの相談に応じ、本人の希望や適性にあった活動先やボランティアグループを紹介してくれる。クリスマス会などのイベントや交流会なども開催しているので、これらに参加してみるのも良いと思う。少しでもボランティア活動に興味や関心を持った人、勇気を出して様々なボランティア活動に取り組んでほしい。そして、活動を通して少しずつ形作られる人への思いやりの心を感じてほしい。

さあ、あなたも友達を誘ってボランティアを始めてみませんか。

《ボランティアの心得》
(1)できることからはじめる
(2)無理のない範囲で活動を続ける
(3)相手との約束を守る
(4)独りで問題を抱え込まない
(5)相手の立場を理解する
(6)周囲の人たちから理解を得るよう心がける
(7)活動にけじめを付ける
(8)活動を点検し、記録する
(9)秘密を守る

 
最後に、この論文を書くにあたって協力してくださった「ふれあいの里」の職員の方々に心から感謝します。

 
『参考資料』
・「ボランティア もう一つの情報社会」  金子郁容著   (岩波新書)
・「ボランティア活動のすすめ」      桜井 猛著   (けやきブックレット18)
・「ビデオによる職業ガイド20 21世紀の福祉の仕事 ボランティア編」
  一番ヶ瀬康子監修(ゆまに書房)
・「平成11年度 事業概要」       特別養護老人ホーム ふれあいの里
・「社会福祉法人知多福祉会 ふれあいの里」パンフレット
 

(別表1) 老人ホームの種類 (※平成11年度における種類)

名 称 年 齢 条 件
特別養護老人ホーム 65歳以上  身体上または精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、居宅において適切な介護を受けることが困難な方
養護老人ホーム 65歳以上  身体上または精神上、又は環境上の理由及び経済的な理由により、居宅での生活が困難な方
軽費老人ホーム 60歳以上  低所得階級に属し、家庭環境・住宅事情等の理由により、居宅において生活するのが困難な方
ケア・ハウス  身体機能の低下等が認められ、又は高齢等のため独立して生活するには不安が認められ、家族による援助を受けることが困難で、有料老人ホームに入るほど経済的余裕がない方
有料老人ホーム  身体機能の低下等が認められ、又は高齢等のため独立して生活するには不安が認められ、家族による援助を受けることが困難な方

 

(別表2)日課表

7:00 ┼ 起床 洗面 食堂移動 朝食
8:00 ┼ 体操
9:00 ┼ 入浴
10:00 ┼ 書道クラブ・音楽クラブ(月)
11:00 ┼
12:00 ┼ 昼食
13:00 ┼ 定期検診(木)
14:00 ┼
15:00 ┼ 水分補給
16:00 ┼
17:00 ┼ 夕食
18:00 ┼ 歯磨き・うがい
19:00 ┼
20:00 ┼ 水分補給
21:00 ┼ 就寝

 

(別表3)年間行事

・菓子販売(月2回)
・クラフトクラブ(月1回)
・カラオケクラブ(月1回)
・誕生日会(月1回)
・喫茶店(週1回)
・レクリエーション(月1回)
・ショッピング(月1回)
・ドライブ(月1回)
・演芸訪問(月1回)
・朗読ボランティア(月1回)
・季節行事(年15回)

 

(別表4)定期的ボランティアの活動状況(※平成11年度)

 名 称  会 員 数  活 動 日  一回あたりの活動人数
 介護ボランティア「つつじ」  25  毎週火・木・金  2人
 ゆ い の 会  19  第2・3週 水・木・金  3人
 知多市赤十字奉仕団  50  毎週水・木  3人
 ガールスカウト78  19  毎月第3金・第2土  5人

 

(別表5)その他グループ・個人によるボランティア

・フラメンコ演舞訪問
・フラダンス演舞訪問
・カラオケ同好会訪問
・西知多理容組合理髪ボランティア
・サザンクロス ロックバンド演奏訪問
・名鉄グループ演芸訪問
・グループ「円」演芸訪問
・梅っ子広場 朗読ボランティア
・接骨院
・中国整体
・生け花
・庭の手入れ