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半田高等学校
在校生論文顕彰

第29回(平成30年度)

第29回(平成30年度)在校生論文顕彰は12月に締め切り、審査を経て、最優秀賞1編、優秀賞3編、佳作5編、特別賞2編が選ばれました。結果発表と表彰は2月に行われました。


基本テーマ
『私のよさ・みんなのよさ
~私の大切にしたいこと~』
応募総数
495編
入賞作品
 題名受賞者
最優秀賞 後ろ向きでも前進を 2年
竹内 蒼
優秀賞 私の考え みんなの考え 1年
園田 航太
優秀賞 大切の在りか 1年
村川 里穂
優秀賞 経験を『よさ』に 3年
間瀬 彩芽
佳作 視点を変えてみえた自分 1年
倉知 薫子
佳作 生きる力 1年
奥平 結衣
佳作 出会いと繋がり 1年
久松 真菜
佳作 表情の役割 2年
有賀 心美
佳作 詩から学んだこと 2年
伊東 柚香
特別賞 MAGIC 2年
髙浪 菜乃
特別賞 それもまた『よさ』 3年
蜷川 晴太

最優秀作品

後ろ向きでも前進を
竹内 蒼

私は、自分でいうのはなんだが、ネガティブな性格である。高校二年生の夏、大学に進学するのであれば、そろそろ周りも勉強に力を入れ始め、定期テストや実力テストへの意識が変わってきたように思える。また、半田高校では部活にも力を入れていることもあって、部活と勉強の両立もしなければならない。ただ、そんな中、あまり成績が上がらず伸び悩んでいる私は、どうしても劣等感や嫉妬を覚えてしまう。中学生のときもこんな性格だった。だから、友達も多くはなかった。むしろ少ない方だったかもしれない。しかし、そんな私にも小学校からの親友と呼べる人がいる。
 私と彼女は真反対の性格だ。私がネガティブなのに対して、彼女はとてもポジティブな性格をしている。性格だけでなく、他のことでもそうだ。私はインドア派で絵を黙々と描くのが好きで、彼女はアウトドア派で運動することが大好きだ。高校になってからは、理系と文系に分かれるが、私は理系で、彼女は文系だ。だからもちろん、将来の夢の方向性も全く違う。それだから、普段話すときでもこの「差」はたびたび感じることがある。高校入試が控えた、中学三年生のときもそうだった。彼女が
「高校入ったら部活どうしようかなー。」
と言ったのに対して、私は
「でも受かるかわかんないじゃん。」
と返す。これに対して
「もしもの話だよ!」
と、私を小突きながら言っていた。
 しかし、真反対で、すれ違いばかりだと思われるが、不満はあまり感じていなかった。ある時、彼女にバスケットボールをしようと近くの運動公園に誘われて行ったことがある。だが、正直私は、バスケットボールが大の苦手だ。体育の授業では嫌々やっていたものだったが、彼女としたとき、なぜか楽しく感じた。上手くなったわけでは決してない。シュートなんか、偶然でしか入らなかったが、楽しそうな彼女を見ると、自分も上手くなれた気がしていたのかもしれない。
 私が彼女の家に遊びに行って、絵を描くこともあった。一人で黙々と描くのも好きだったが、二人で絵を描くのは楽しかったし、アイデアもたくさん思い浮かんだ。元々絵を描くのは好きだったが、自分の長所とははっきり言えなかった。絵の教室にも通わせてもらっていたが、どこか「言われたから描きました」という感じだった。しかし、彼女に絵を褒められると、次はこうしようとか、こうやって描いてみようとか、自分の好きな絵を描くようになった。絵を描くことが好きだ、ということが長所だと思えた瞬間だった。
 思えば、誰にでも長所と短所は必ずある。しかし、真反対の性格である彼女と過ごす時、そこには得意、不得意は存在していなかったように思える。互いの長所が互いの短所を埋め合わせていた。昔、絵の教室の先生に言われた言葉を借りると、
「物に輪郭なんていうものは存在しない。光と影で描くんだ。」
これは、芸術以外にも言えると思っている。光を表現するときには影を描く。また、影の色は光の色によって変わる。光と影は互いに影響し合い、必要な存在だ。きっと私も影響を受けたものの一つだ。そうして影響し合うことで、自分という「輪郭」が出来ていくのではないだろうか。
 そして現在、気付いたことがある。それは、私以外の人は、みんなどこかに共通点があるが、「真反対」でもあるということだ。だから、自分の知らないことや経験を教えてもらったり、自分とは違う考え方、価値観を知ることができたりするのだと。人と話すことで、自分の知らない世界がまた一つ広がる。それと同時に、自分も周りに影響を与える。これが、私の最も大切にしていることだ。
 また、この気付きによって、ネガティブな性格であることも少し受け入れることができた。今までは、ポジティブだと良く、ネガティブは悪い、というように自分でも思ってしまっていた。しかし、自分の埋め合わせをしてくれる、対のような人は必ずいる。そして、私が影響させられたように、私も影響を与えることができる。それに気付くことで、今までは、自分は向いていないと身を引いてしまったところでも、自分の活躍するところはどういうところか、他の人が活躍できるところはどういうところかを客観的に考え、行動する事が出来る。だから、人と関わる、つまり、話したり、共に行動したりすることで、相手の事をよく知ることが大切だ。これに気付かせてくれた親友、周りの人たちに感謝したい。
 そして、高校二年生の夏休みがやってきた。彼女は将来のために留学をすることが決まっている。帰ってきた彼女は留学先の事をたくさん話してくれるだろう。私の知らない海外のことを知ることができるのは楽しみだ。そしてきっと、中学三年生のときのように、彼女は将来の夢、そしてその職業についたら…と言う。そして私は消極的に、まだ受かるかわからない、と返す。おそらくこうして「後ろ向きの前進」を続けるのだろうと思う。それでもいいんだと思えるのは、確実に前に進む、いや、進ませてくれるという人がいるからだ。